近本のけん制死は戻りが遅いのではなかった。先に仕事を終えていたのは上まぶた近本のけん制死は、戻りが遅いのではなかった。
先に仕事を終えていたのは上まぶた
2026年9月30日、甲子園。阪神対ヤクルトの初回。
近本光司が奥川恭伸から右前打。無死一塁。
奥川の一塁けん制で、近本は帰塁できずアウト。
続く中野拓夢の左前打。中継が乱れる間に二塁を狙って、タッチアウト。
俊足の連打が、初回無得点で終わった。
上まぶたが、先に閉じていた。
リードの幅より先に。
帰塁の指がベースへ戻るより先に。
視線が投手の腕へ戻るより、さらに先に。上まぶただけが、閉じる仕事を終えていた。
順番は、こう崩れていた。
上まぶたが下りきる
そのあと、視線がまだ一塁側に残る
最後に、指がベースへ伸びる
道場のミットで、同じ順番を一度踏んだ。
右の突きを出す直前、上まぶたが先に下りた。相手の左ミットは、まだ動いていなかった。
拳は空を叩いた。当たったのは、自分の肘の内側だけだった。その日のあと、同じ箇所が三日、薄く赤かった。
やってはいけないのは、まぶたを開けたまま固定しようとすること。閉じる完了が先にあるとき、力で開けても指は遅れない。遅れるのは、開こうとした顎のほうだ。
今夜の確認は、一箇所。
スマホを机に置く直前。画面から指が離れる瞬間だけ、上まぶたを見る。
指がまだ画面に触れているのに、上まぶたがすでに下りきっていたら、その週の順番は崩れている。


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