2026年9月23日 ドジャース対パドレス 5回 山本由伸
犠打を捕った。
三塁へ投げようとした。
三塁手がベースに入っていなかった。
止めようとした。
止まらなかった。
画面はまだ暗い。
指はまだ沈んでいない、と自分では思った。
先に仕事を終えているのは上まぶただけだった。
三塁の空きを、上まぶたが見終えた。
制止の合図が肩に届くより半拍早い。
右中指の第一関節が、すでに内側へ折れ始めていた。
視線が空を確認する。
顎がわずかに引ける。
右肩はまだ浮いていない。
その前に、右中指だけが沈む。
道場で突きを途中で切ろうとした夜がある。
相手の間合いが消えたのを見たあとも、
右中指の腹はすでに拳の内側へ入っていた。
うまくいった日は、指が沈む前に肘の内側が緩んだ。
固まった日は、指だけが先に仕事を終わらせていた。
やってはいけないのは、止まったつもりで肩を見るること。
今夜、部屋の電気を消す前に一度だけ。
右手を膝の上に置く。
投げる真似はするな。
制止する真似だけする。
右中指の第一関節が、肩より先に折れていたら、その夜の送球はもう始まっている。
指が沈んでから、まぶたはもう何も見ていない。


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