延長10回、2死一、三塁。点差は1-1。ここでバットが早く出るか、ボールを最後まで見るかは、技術の話に見える。実際は、長いゼロ行進のあとに起きる「間の前出し」の話である。

9月8日、横浜。ヤクルトの赤羽由紘は10回、伊勢大夢から右翼線へ2点二塁打を放った。同じ試合の4回、無死一、三塁では見逃し三振だった。結果だけ並べると「後半に決めた」で終わる。見るべきは、長い沈黙のあとに間が短くなるかどうかである。
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0-0が8回まで続き、9回に押し出しと転倒が絡んで1-1。10回2死から勝ち越し。試合が動いたのは終盤だけだった。

延長戦の打席で間が前に出る理由

長いイニングで点が入らないと、打席の中の「待つ時間」が先に削られる。ボールが見えなくなる前に、振り出しのタイミングが前に来る。4回の赤羽は、好機の中で球を見送り三振している。チャンスそのものが、間を短くする材料になる。

やってはいけないのは、2死になった瞬間に「ここで決め切る」と振り幅だけを広げることだ。振り幅を広げると、始動が半拍早くなる。半拍早いと、外の球でも中の球でも、芯の位置が前にずれる。

【画像:H2「2死から打ち急ぐときの確認」の直前】

2死から打ち急ぐときの確認

いつ見るか:2死になって次の一球を待つ前、バットを担いだ直後
どこを見るか:間(投手が足を上げてから、自分の始動までの空白)
何が起きていたら崩れているか:投球の頂点より前に、自分の手が動き始めている

この確認は打席の終わりにやるものではない。2死の「次の一球」の前に一度だけ見る。試合が長いほど、空白は勝手に短くなる。短くなった空白を、気合で埋めようとすると振りが先行する。

長いゼロ行進のあと、待ちが短くなる身体
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道場でも同じことが起きる。組手でお互いに点が入らず、時計だけが進むと、次の一歩が早くなる。相手の気配より先に足が出る。野球の延長も、空手の膠着も、空白が嫌になって自分から埋めにいく点が同じだ。

9回には別の崩れもあった。ヤクルトの並木秀尊が右翼で転倒し、同点を許した。芝に足を取られた、と報じられている。接地が崩れるのも、長い無得点のあとに起きやすい。ただし今回見る軸は接地ではない。転倒のあとに続く10回の打席で、間が戻ったかどうかである。

フルコンの試合で、延長に近い時間まで点が動かなかった回がある。相手の手が止まる前に、自分の突きが先に出た。当たったのは自分の前腕だった。打ち急いだ自覚は、当たったあとでしか来なかった。あのときの前腕の位置が、今も「空白が短くなった印」として残っている。

赤羽の10回は、4回の見逃し三振のあとに間を戻した打席として読める。戻し方は派手ではない。2死一、三塁でも、投手の足が上がるまで手を動かさない。それだけだ。長い試合で残るのは、振りの大きさより、空白を削らないことである。