やってはいけないのは、上半身から大谷をコピーすること
バットを高く上げて、胸を開いて、一発で飛ばそうとする。子どもが強打者の映像を見た翌日、素振りでいちばん多い失敗はそこです。見た目は近い。音も大きい。ただし一球目からかかとが先に離れ、つま先だけが残る。
飛ばしたい気持ちは正しい。崩れるのは気持ちではなく、床との接点です。ヘッドの軌道を先に直しても、かかとが逃げたままなら軌道は空中で描いただけになります。
【画像:H2「教室で大谷の打ち方をまねる子が出る理由」の直前】
教室で大谷の打ち方をまねる子が出る理由
中田翔さんが名古屋に開いた小中学生向けの施設では、日本ハム時代の同僚・大谷翔平の打ち方をまねる子が出る、と本人が話しています。頭ごなしに「ダメ」とは言わない。まずは研究してきたことを認める。そのうえで、「あの打ち方をするには、先にこれをできた方がいい」と返す、と明言しています。
ここが観察の入口です。禁止しているのはフォーム全体ではありません。先に床を捨てたまま、上だけを借りることです。映像のフィニッシュは完成形です。子どもが最初に借りてしまうのも、いちばん目立つその完成形です。
接地とは、両足裏が同じタイミングで床を押し返せる状態です。かかとが先行して浮くと、下からの力は途切れ、腕だけが加速します。見た目の弧は大きくなっても、インパクトで体は後ろに残ります。子どもに多いのはこの一本です。
つま先だけが残っていると、膝は前に出にくくなります。出たように見えても、実際は上体が先に回り、手がボールの前に来ます。指導者が「もっと回せ」と言うほど、かかとはさらに浅くなります。見る場所を足裏に固定しないと、言葉が増えるたびに上へ逃げます。
試合の打席でも同じです。名前を呼ばれてボックスに入ったあと、最初の構えでかかとがすでに浅い子は、初球から手が先行します。教室でも本番でも、判定は足裏で足ります。肩や目線を同時に見ない。一度に見る軸は一つです。
子どもバッティングでかかとが浮くときの確認
確認は特別な器具いりません。室内の床、更衣室のタイル、自宅の畳でもできます。素振り用のバットがなくても、両手を重ねて構えの高さまで上げれば足裏は出ます。
先に一回、かかとを床に置いたまま軽く膝を落とす。その位置からバットだけを動かしてみる。かかとが逃げたら、その振りは「大谷に見える形」であって、床を使った振りではありません。逃げた瞬間に振るのを止める。止めた位置でかかとを戻し、同じ高さからもう一度だけ動かす。二本目でかかとが残れば、その日の確認はそれで足りる。
中田さんの伝え方の前後差はここです。前半は「よく研究してきたな」。後半は「その打ち方の前に、床を残した方がいい」。否定で形を奪わず、順番だけを入れ替える。子どもが自分で「なんであの子は打てるのか」を考え始める、と本人が言っている変化は、この順番のあとに起きやすい。
指導側が先に肩やヘッドの軌道を直すと、子どもはさらに上半身で合わせにいきます。床が戻る前に軌道だけ直すと、浮いたかかとは固定されます。直す順を逆にしない。先に床、あとから形です。
週末の練習、朝の素振り、試合前のティー。どこでも同じ判定で足ります。浮いていたかかとを戻してから、映像の形を足す。それだけで、借り物の一発と、自分の一歩目は分かれます。


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