大会の翌朝、体重計に乗った瞬間の数字だけを見ると、頭の中はすぐ「戻った」になる。

何カ月かけて落としたものが、数日で半分近く戻ったように見える。その見え方が怖い。

元楽天の岡島豪郎さんは、2026年2月から約5カ月半で93kgから73kgまで落とし、JBBFの宮城県ビギナーズ・メンズフィジークに初出場した。大会後、ドーナツ、ケーキ、ハンバーガー、焼肉と解禁し、ある1日は9624kcal。体重は1日で6.5kg、3日で12kg増えた、と本人が振り返っている。次は同じやり方をしない、とも話している。

ここから先は、その数字の是非ではない。同じように減量を切ったあと、体重計の前で止まってしまう人の側の話にする。

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大会後に体重が急増する理由は脂肪だけでは説明できない

今回見るのは一点だけ。制限を外した直後に、先に体内へ戻る水分とグリコーゲン。

脂肪が増える速度と、体重計が増える速度は別物だ。

長い減量の終盤、糖質も塩分も水分も絞られる。筋の中のグリコーゲンは減り、グリコーゲンと一緒に抱えていた水も減る。だから体重は、見た目以上に軽く出る。

大会が終わって炭水化物と塩分が戻ると、枯れていたグリコーゲンが筋肉と肝臓に入り直す。グリコーゲン1gは、おおよそ3〜4gの水と結びついて貯蔵される。糖質を一気に入れた翌朝、体重が数キロ跳ねても、その全部が体脂肪になったわけではない。

胃の中の食べものと、腸に残ったものと、塩分で引き込んだ細胞外の水も、同じ日の体重計に乗る。1日6.5kg、3日12kgという数字は大きい。それでも「12kgすべてが脂肪」と読むと、判断がずれる。

体脂肪1kgはおおよそ7200kcal前後とされる。3日で12kgを全部脂肪で説明するには、摂取だけでは足りない。先に動いているのは、貯蔵と水分の側だ。

減量後3日で体重が戻るときに先に戻るもの

減量末期の身体は、階段で脚が上がらなくなることがある。岡島さんも減量中、有酸素を1日3回こなし、階段で脚が上がらなかったと語っている。あれは気合の話より、貯蔵が空に近いときの接地の話に近い。

空のあとに、一気に入れる。身体は水を引き戻す。顔が丸く見え、指輪がきつくなり、靴の甲が当たる。筋の張りも同時に戻る。見た目が崩れたように感じて、実際は中が潤い直している時間が重なる。

フルコンの試合前に落としたあと、初日の食事で翌朝の道着の帯がきつくなったことがある。鏡では戻ったに見える。足の甲を触ると、脂肪というより水の戻りだった。翌日の稽古では、踏み込みの重さが先に戻っていた。減った筋が一晩で生えたわけではない。先に戻るのは、踏み込めないほど空だった側だ。

本番のピークは、空に近い状態を舞台に持っていく作業でもある。ピークが外れた瞬間、身体は補充を急ぐ。体重計はその急ぐ音を、大きく拾う。

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翌朝の体重計を見る前に、指と足の甲を触る

試すのはこれだけ。解禁の翌朝、乗る前に指輪、顔の骨の際、足の甲を触る。

指輪が昨夜より入りにくい、足の甲が靴に当たる、頬の骨の際がぼやける。その三つが揃っているなら、数字の主は水とグリコーゲンの戻りを疑う。筋の輪郭が前日より膨らんで見えるのも、同じ方向だ。

逆に、触ってもむくまないのに体重だけが増え続け、腹だけが先行して厚くなるなら、その先は別の話になる。最初の3日を全部「失敗」にしない。最初の3日を全部「水だから問題ない」にもしない。

大会後に同じやり方をしない、という振り返りは、数字の大きさそのものより、空にしてから一気に戻す速度の話として読める。減量幅が大きければ、戻りの振幅も大きく出やすい。

体重計は正直だが、内訳は黙っている。黙っている側を、指で先に読む。