免許を取ったばかりの興奮の中で、ふと目に入った「おとなしそうな」女性の動き。カズレーザーがそこで感じた違和感と、意外なほど温かい「かわいそう」という言葉。あの瞬間の表情や仕草に、僕は長年の組手で培った“相手の本音を読む感覚”が重なってしまったんですよね。なぜ今、この話がこんなに引っかかったのか。少し深く掘ってみたいと思います。
メイプル超合金のカズレーザーさんが、SBSラジオ『週刊!しゃべレーザー』で運転免許取得を報告したのは7月24日の放送。昨年から教習所に通い、ようやく本免学科試験に合格して交付手続きに臨んだという流れです。
交付窓口の前でみんな順番に並んでいるところへ、20歳くらいのおとなしそうな女性がスッと最前列に入ってきた。あまりにも自然な動きだったため、最初は「え?」としか思えなかったと。窓口の警官との会話も噛み合わず、「どういうことですか?」と相手が理解できていない様子に「怖かった」と振り返っています。
そしてカズレーザーさんの分析がこう続く。「注意されたことがなさそうな感じだった。怒られたこととか、注意されたことがないのかなと思った」。さらに「周りからチヤホヤされたまま死ねたら幸せだったと思うけど…ここからずっと不幸な気がする」「都落ちというかランクダウンしてきた。ずっと殿様姫様じゃない時点で、こいつかわいそうだな」。それでも最後に「ただ、割り込みは許せねえ。すげえ嫌だった」と本音を漏らした。

この「スッと入ってくる自然さ」が、僕にはとても印象的だった。フルコンタクト空手を長く続けてきた人間からすると、相手の動きに「予兆がない」というのは、実は一番警戒すべきサインなんです。
道場で組手をやっているとき、明らかに力強い相手は前に出てくる前に肩が少し上がったり、足の裏が床を蹴る音が変わったりする。ところが、本当に手強い相手は、まるで何も考えていないような穏やかな表情のまま、間合いを詰めてくることがある。あるとき、後輩とスパーリングしていて、相手が「今日は調子悪いです」とぼそっと言いながら、ふわっとしたガードのまま突然クローズドで体を寄せてきた。気づいたときにはすでに重心が崩されていて、そのままダウンを喫した。あのときの「静かさ」が、後から考えると恐ろしいほどの集中力だった。注意された経験が少ない人間の動きも、似た空気をまとっていることがある。外から見ればおとなしそうでも、内側では「自分の順番」が当たり前になっている。カズレーザーさんが「すげーなと。こういう子がそういうことするんだ」と感じた瞬間は、まさにその「予兆のないクローズ」を見た感覚に近かったんじゃないかと思うんです。

カズレーザーさんの「かわいそう」という言葉も、単なる皮肉じゃない。僕自身、筋トレを25年続けていて気づいたことがあります。ジムでベンチプレスをセットした直後に、誰かが「空いてる?」も言わずにバーベルに手をかける場面に何度か遭遇した。最初は腹が立つけど、後から見るとその人は本当に周囲が見えていない。視線が常に自分のフォームだけに向いていて、他者の存在がノイズになっている。そういう人に「ちょっと待って」と言っても、一瞬ぽかんとした顔をされることが多い。注意された経験が少ない人ほど、指摘された瞬間に世界が急に狭くなる。カズレーザーさんが「チヤホヤされないところに下がってきてる」と表現したのは、まさにその世界の狭さに対する、ある種の憐れみだったんだと思う。芸能界に長くいる彼だからこそ、特別扱いされる空気と、それを失ったときの脆さを、肌で知っている。だからこそ「許せねえ」と怒りつつも、「かわいそうだな」と距離を置いて見られたんじゃないでしょうか。
ファンの反応を見ていると、「割り込みは絶対ダメ」「でもカズレーザーの言い方が優しい」という声が自然に多い。これは、彼の観察が単なる批判で終わっていないからでしょう。人間関係の機微を読むとき、怒りだけだと相手を追い詰めるだけになる。でも「かわいそう」と一度受け止めたうえで線を引くと、相手も周囲も少し楽になる。道場で後輩がメンタルを崩しそうになったときも、僕はまず「お前の今の動きは危険だ」と伝えたあと、「でもお前がそうなるのもわかる」と付け加えるようにしていた。その一言で、相手の表情が少し緩む瞬間がある。カズレーザーさんの言葉にも、似た温度感を感じました。

免許交付という「これから運転という社会的責任を負う」場で起きたこの出来事は、ただのマナー違反以上のものを浮かび上がらせている。秩序を守る側と、秩序を自分の都合で動かす側が、同じ空間にいることの難しさ。カズレーザーさんがそれを「都落ち」と表現したところに、彼の人間観察の深さが表れている気がします。
あなたが日常で「おとなしそうなのに、なぜか線を越えてくる人」に出会ったとき、どんな感情が先に来ますか? 怒りだけですか、それともどこかに「この人、大丈夫かな」という気持ちが混じりますか。もしよかったら、あなたの経験を教えてください。僕もまた、道場やジムで似た場面に遭遇したら、今回のカズレーザーさんの言葉を思い出しながら向き合ってみようと思います。
このテーマに関連して、人間の「静かな動き」や対人関係の機微を深く考えるのに役立つかもしれない本として、参考までに『相手の本音を読む技術』(武道や観察に通じる視点が多め)を挙げておきます。興味があれば手元に置いてみるのも一案です。
Amazonで見てみる


コメントする