甲子園の夏の空気って、独特なんですよね。熱気と緊張が混じって、選手のちょっとしたまばたきさえも大きく見える。7月25日、巨人が阪神に5-1で勝ち、6年ぶりにリーグ50勝一番乗りを果たして前半戦首位を確定させた瞬間、僕は画面越しに橋上監督代行の横顔をじっと見ていました。派手なガッツポーズもない。ただ、わずかに顎が引かれて、視線が低く落ちただけ。あの静けさに、何かを感じたんです。

事実を短く整理するとこうです。巨人が甲子園で阪神に連勝し、前半戦を首位で折り返したのは2024年以来。過去35度の前半戦首位のうち、優勝が30度でV率は86%。橋上秀樹監督代行(60)が指揮を執ってから約2カ月。ドラ1の竹丸和幸が6回1失点で7勝目を挙げ、ダルベックが2試合連続の17号ソロ、佐々木俊輔が7号ソロと適時二塁打で加点した一戦でした。
でも数字の話はここまででいい。気になるのは、あの首位確定の「過程」に漂っていた空気感なんです。特に四回、1点ビハインドからダルベックが先頭で同点弾を放った直後のベンチ。選手たちがどよめく中で、ダルベック本人はホームを回りながら少しだけ口元を緩めただけで、すぐにヘルメットを脱いで次の準備に入っていた。派手に腕を振り回すでもなく、ただ「次」を見ている顔。あれ、空手の組手で序盤にポイントを取った直後の、ある種の「警戒の余韻」にそっくりでした。
思い出すのは、25年近く前の道場での一場面です。フルコンタクトの練習試合で、序盤に相手のガードを崩して有利に立ったときのこと。僕はつい力が入りすぎて前に出てしまい、相手のカウンターをくらって逆転された。試合後、師範に「リードした瞬間が一番危ない。肩の力が抜けた瞬間に、相手は必ず来る」と言われたんです。あのときの身体感覚――胸の奥が少しざわつき、呼吸が浅くなる感じ――が、甲子園のダルベックの表情に重なった。彼はホームランを打った直後も、肩の力を抜ききらずに次の打席を意識していたように見えた。

橋上代行の立ち位置も面白い。5月26日から指揮を執り、首位争いに踏みとどまり続けている。記者会見での言葉は「あくまでまだ途中ですから」と淡々としているのに、試合中の仕草を見ていると、ベンチで腕を組んだまま指先がわずかに動いていることがある。あれは、筋トレで限界近くのセットをこなしているときの、無意識の「次のレップをどう扱うか」を計算する動きに近い。僕自身、ベンチプレスで今まで挙げたことのない重量に挑んだとき、バーが胸に触れた瞬間に「押し返す角度を1度だけ変える」と決めて、フォームを根本から修正した経験がある。あのときの頭の中は、派手な気合ではなく、静かな計算の連続だった。橋上代行の指揮も、そんな「静かな修正」の積み重ねに見えて仕方がない。
ファンの反応を見ても、単純な「やったー!」より「この粘り強さが続きますように」という声が多い印象です。逆転勝ちがリーグ最多の20試合という数字も、ただの強さではなく「あと1球」からの粘りが積み重なった結果。野球という長いシーズンを、武道の試合のように「前半でリードしたからといって気を抜かない」姿勢で戦っているチームの空気が、そこに出ている。
業界の人間関係の機微で言えば、代行という立場で首位を守る難しさもあるはずです。選手たちとの距離感を保ちつつ、指揮を統一する。道場で後輩のメンタルを守るときに似た、微妙なバランス感覚が必要になる。橋上代行が試合後に「マイナスではないことが良かった」と漏らした一言に、僕はそんな機微を感じました。派手な勝利宣言ではなく、ただ「ここまでやってきたことが無駄じゃなかった」と確認するような言葉。筋トレを続けていて気づいたのは、記録を更新した直後より、その過程で「続けられた」という実感のほうが、長く体に残るということ。巨人の今の空気も、そこに近いんじゃないかと思います。

後半戦はもちろん未知数です。でもこの前半戦首位の裏側にある「我慢の極意」――リードした瞬間に肩の力を抜ききらず、次の動きを静かに計算する姿勢――は、数字以上に価値がある気がする。あなたはどう感じますか? この粘り強さが、シーズン終盤にどんな表情を見せるのか。少し想像してみたくなります。
このテーマに関連する本として参考までに、武道の視点から勝負の「間」や我慢を深く掘り下げたものが役立つ人もいるかもしれません。
五輪書(宮本武蔵) ― 長期戦での心の置き方を考えるときに、ふと手に取ることがあります。


コメントする