竹野内豊の眉なし出っ歯が語る役者の「自分を削る」覚悟
ニュースを見た瞬間、道場で組手に入る直前のあの感覚を、はっきりと思い出したんです。相手と向き合って、いつもの「ソフトな自分」を一旦脱ぎ捨てる。あの瞬間、笑顔は消え、目つきが変わり、呼吸が少し浅くなる。竹野内豊さんが「ガス人間」で見せた変貌は、まさにそんな「スイッチ」を物理的に体現したもののように感じました。
事実の整理:一見すると別人になった森靖利
Netflixシリーズ『ガス人間』(配信中)で、竹野内豊さんは元ヤクザで上場企業社長・森靖利を演じています。黒い噂が絶えないダークな人物。取調室で刑事を挑発するシーンなどが特に話題で、「エンドロールまで気づかなかった」という声がSNSで相次いでいます。
人物デザイン監修を務めた柘植伊佐夫さんによると、狙いは明確。「一見すると竹野内さんとはわからない容貌に仕立て上げる」こと。日焼けした肌に眉なし、歯が出ている状態。マウスピースを入れて骨格から変え、竹野内さんの持つ「ノーブルさ」を削り取る。髪はテラテラに光らせ、オールバックで襟足を長く。ヤクザキャラ全体の髪型記号としても使われているそうです。Netflixシリーズ『ガス人間』(配信中)で、竹野内豊さんは元ヤクザで上場企業社長・森靖利を演じています。黒い噂が絶えないダークな人物。取調室で刑事を挑発するシーンなどが特に話題で、「エンドロールまで気づかなかった」という声がSNSで相次いでいます。

なぜここまで「削る」必要があったのか ― デザインの深い意図
柘植さんはこう語っています。「森靖利は『わかりやすいワル』です。しかし…最上位の悪ではない。その『いかにも悪そう』という雰囲気を、極めて美男子でスマートな竹野内さんで実現しなければならない」。
ここがポイントなんですよね。ただ「悪く見せる」んじゃない。「美しい素材を醜くすることで真実味を浮き彫りにする」。これが本作の一貫した手法だと柘植さんは指摘しています。
眉をなくすだけで、顔の表情の読み取り方がガラッと変わります。通常、眉の微かな動きで「優しさ」や「知性」が滲み出る竹野内さんの顔が、眉なしになると目と口元だけが強調され、感情が読みにくくなる。そこにマウスピースで強制的に歯を突き出させることで、笑おうとしても不自然な「にやり」が生まれる。骨格が変わるので、顎のラインや頰の落ち方も変わり、全体の印象が「清潔感ゼロ」の不穏なものになる。

実際に道場で似た体験をしたことがあります。ある大会の前、僕はいつもより短く髪を刈り上げて臨んだんです。理由はシンプル。「いつもの自分」で戦いたくなかったから。髪型が変わるだけで、鏡に映る自分が「別のモード」に入りやすくなる。竹野内さんも、マウスピースを入れて骨格が変わった瞬間、「日常の竹野内豊」を物理的に切り離せたんじゃないでしょうか。
役者とデザイナーの信頼が作った「境界線」の向こう側
柘植さんと竹野内さんの関係は2016年の『シン・ゴジラ』から続いているそうです。「竹野内さんとは他の作品でもご一緒していて、おそらくこちらのデザインワークに対してとても信頼をしてくださっていた」と柘植さん。美男子俳優がここまで自分を「削られる」ことに、腰が引けても不思議じゃないのに、全くそんな気配はなかったという。
これって、業界の人間関係の機微を象徴していると思うんです。信頼がなければ、こんな大胆なデザインは成立しない。竹野内さんが「ノーブルさ」を手放せたのは、柘植さんとの長年のやり取りの中で「この人なら自分のイメージを壊しても、ちゃんと役に還元してくれる」と感じていたからこそ。逆に柘植さんも、「この役のためなら」と全力で削り取る覚悟があった。
道場で言うなら、師匠と弟子の関係に近い。厳しい指導を受け入れるには、まず「この人なら自分を壊してくれても大丈夫」という信頼が必要なんですよね。その信頼があるからこそ、組手で本気でぶつかり合える。竹野内さんと柘植さんの間にも、そんな「本気の境界線」があったように感じます。
この変貌が僕らに問いかけるもの
配信時代、視覚的なインパクトがより強く求められる中で、こうした「自分を削る」役作りはますます貴重になっています。ただカッコよく見せるのではなく、敢えて嫌われ役や不気味な役に身を投じる。そこに、役者としての軸の強さを感じます。
筋トレを25年続けてきて気づいたのは、「自分を削る」行為は一時的な痛みだけど、その先にしか見えない景色があるということ。竹野内さんのこの変貌も、同じことなんじゃないかと思うんです。ノーブルさを削り取った先に、森靖利という人物の本当の不気味さと存在感が浮かび上がった。

このニュースを見て、改めて「役者ってすごいな」と感じると同時に、自分自身の日常でも「いつもの自分」を少し削ってみる勇気を持てたらいいな、と思いました。髪型を変えるだけでもいい。話し方を少し変えてみるだけでもいい。その小さなスイッチが、意外な自分を引き出してくれるかもしれない。
皆さんは、どんなきっかけで「いつもの自分」を脱ぎ捨てた経験がありますか? もしよかったら、コメントで教えてください。
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この記事が、竹野内豊さんの役作りや『ガス人間』の深みを、少しでも身近に感じるきっかけになれば嬉しいです。


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