撮影現場で突然響く大きな声。 それが「作品への本気」なのか、「人への行き過ぎ」なのか。 その線引きが、今、すごく気になっています。
事実の整理
TBS日曜劇場「VIVANT」の福澤克雄監督(62)が、若手スタッフからのパワハラ告発を受け、TBSの調査でパワハラに該当する言動が認められ、処分を受け一時現場を離れたというニュースが報じられました。
具体的に指摘されたのは、NG(撮り直し)を極端に嫌う監督の態度です。芸能プロ関係者の証言によると、有名俳優に対しても「お前だけだぞ、NGを出してるのは!」と怒鳴ることがあり、現場全体に緊張感が漂っていたそうです。カメラが回っていないオフの時間は気さくで、キャストからの信頼も厚かったという声も同時に聞かれます。
放送までわずか2週間を切ったタイミングでの発覚。作品自体への影響はないとされていますが、ネットや業界では「本気の監督スタイル」と「現代の現場とのギャップ」が話題になっています。
声の「重み」と「標的」の違い
この「お前だけだぞ」という言葉が、僕の胸に引っかかったんですよね。
道場で組手をやっていた頃、師範に大きな声で指摘されたことが何度もありました。「腰が浮いてる!」「ガード下げてるぞ!」と、声が現場に響く。でも、その後必ず「なぜそう言ったと思う?」と静かに聞いてくれた。声は大きかったけど、「お前だけ」ではなく「一緒に直そう」というニュアンスが伝わってきたんです。
筋トレを25年続けていて気づいたのは、指摘の「方向性」が大事だということ。ベンチプレスでフォームが崩れた時、トレーナーが「もっと肩甲骨を寄せろ!」と声を張り上げる。でもその目は僕のフォーム全体を見ていて、「お前だけダメだ」とは絶対に言わない。声の大きさは「集中を促すツール」であって、「個人を切り離す武器」にはならない。
福澤監督のケースで気になるのは、「お前だけだぞ」という言葉が、現場にいる他の人々を「傍観者」にしてしまう点です。 大きな声で誰かを名指しすると、周囲は一瞬息を潜めます。視線が集まり、対象になった人の肩がわずかに上がる。唇が固く結ばれ、視線が一瞬逸れてすぐ戻る。あの微かな「孤立感」が、積み重なると「恐怖」ではなく「諦め」に変わっていく。
オフの時間に監督が気さくに話しかけられるなら、それは「スイッチの切り替え」ができる人だということ。でも、若手スタッフにとっては「スイッチが入っている時間」の方が圧倒的に長い。キャストとスタッフでは、立場の重みが違うんですよね。
「情熱」と「敬意」のバランスを、現場は今、問われている
芸能界の現場は、昔から「本気で怒鳴る監督」が一定数いました。それが作品のクオリティを押し上げてきた側面もある。でも、2026年現在、心理的安全性という言葉が普通に語られるようになりました。 「本気で怒鳴られる=愛情」という価値観が、通用しにくくなっている。
特に「お前だけ」という表現は、相手の存在を「問題の原因」として切り離してしまう。武道や筋トレの世界で一番避けたいのは、まさにこれ。 「君のポテンシャルならもっとできるはずだ」という言葉と、「お前だけダメだ」という言葉は、声の大きさが同じでも、受け取る側の内側で全く違う反応を引き起こします。
VIVANTという作品自体が、緊張と信頼、裏切りと絆をテーマにしているだけに、余計にこのニュースが胸に刺さるんです。 監督が現場で作っていた「緊張感」は、作品の空気感に活きていたかもしれない。でも、それが「恐怖」ではなく「集中」として機能していたかどうかは、結局、声の「後ろ」に何があったかで決まる。
これからどうなるか、そして僕らが考えたいこと
放送が近い中での処分。監督本人がどう受け止め、どう向き合うのかはわかりません。でも、キャストの多くが彼の人柄を信頼していたという話も同時に聞こえてくる。
完璧を追求する気持ちは、決して悪いことじゃない。 ただ、それを「声」で伝えるときに、相手を「一緒に高め合う存在」として見ているか、「問題を起こす存在」として見ているか。その微かな違いが、結局、人間関係のすべてを変えるんだと思います。
あなたがもし現場にいたら、その怒鳴り声をどう受け止めますか?
「本気で言ってくれてありがたい」と思うか、「ちょっと傷ついた」と思うか。
経験や立場によって答えは違うと思うんです。よかったらコメントで聞かせてください。
このニュースをきっかけに、少しでも「声の使い方」や「指摘の仕方」を振り返る人が増えたらいいなと思います。 道場でもジムでも、結局「一緒に良くなりたい」という気持ちが伝わるとき、人は一番動けるんですよね。
このニュースから、少し前向きな気持ちになれたら…
現場の空気や、自分の伝え方を少し見つめ直したくなった人に、自然に手に取ってもらえそうな本を3冊挙げておきます。
『アサーティブ・コミュニケーション』
相手を尊重しつつ、自分の考えをしっかり伝える技術。声の「質」を考えるのに役立ちます。
『職場の心理的安全性』
緊張感と安心感のバランスを、データと実例で考えさせてくれる一冊。
『武道に学ぶ「間」の活かし方』
声のタイミングや、相手との距離感を深く考えさせられる本。道場経験者としておすすめ。
(この記事は、筆者の25年以上の筋トレ・武道経験と、10年以上にわたる芸能現場の人間関係観察に基づく独自の考察です)



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